高齢者の心に寄り添うケアを行うためには、加齢に伴う身体的・精神的な変化や、退職、配偶者との別れ、健康の衰えなどによって生じる心の状態を理解することが出発点となります。その上で、高齢者一人ひとりが持つ個性や人生観を尊重し、ケアのすべてにおいてその人らしさを反映させることが不可欠です。

心のケアの基本は、高齢者の話を丁寧に聴くことです。提供者側の都合や先入観で話を遮るのではなく、時間をかけて最後まで耳を傾ける傾聴の姿勢が大切です。
特に、過去の楽しかった経験や苦労話など、「過去の記憶」について話すことは、高齢者にとって自己肯定感や尊厳の維持に繋がります。その際、単に聞くだけでなく共感の言葉を添えると高齢者に安心感や信頼感が生まれます。
心のケアを行う際は、高齢者の残存能力を最大限に活用してもらう機会を提供することも重要です。自分でできることはご自身で行ってもらい、「できる」という達成感を持続させることで自尊心を保ち、意欲の低下を防ぎます。また、日々の生活における自己決定の機会を尊重することも心の安定に繋がります。小さなことでも選択肢を提示し、ご自身の意思で決められる環境を整えることが大切です。
身体の自由が利かなくなることや、社会との繋がりが希薄になることへの孤独感や不安感は、高齢者が抱えやすい問題です。ケアの場面では、優しく声をかけ適度なスキンシップによって温かい心の繋がりを感じてもらうよう努めます。また、レクリエーションや行事などを通じて他者との交流の機会を設けることも、生きる意欲を引き出す上で有効な方法となります。